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シェイクスピア・ファースト・フォリオとは
- ルネサンス期イギリスの詩人・劇作家ウィリアム・シェイクスピア (William Shakespeare: 1564-1616)
の最初の戯曲集『ウィリアム・シェイクスピア氏の喜劇、史劇、悲劇』
(1623年刊)を指します。全紙裏表に計4ページが印刷され二つに折って製本される本をフォリオ本(二つ折本)と呼びます。二つ折本の大きさは元の全紙の大きさによりさまざまですが、シェイクスピア・フォリオの1ページの大きさを想像するには「幅がほぼ現代の百科事典なみで、丈はそれより2,3インチ長い」というP・ブレイニー氏の記述が便利でしょう(Peter
W. M. Blayney, The First Folio of Shakespeare, Folger Library
Publications, 1991 参照)。シェイクスピアの戯曲集は初版についで、1632年 1663年(2刷り 1664年)
1685年と第4版まですべてフォリオ本として出版されました。そこで初版のことをファースト・フォリオと呼んでいるのです。二つ折本というフォーマットは、当時は、神学、歴史学、法律学などの学問的文献や古典作家の全集を出版するためのものとされていました。一方、民衆劇場の出し物である戯曲は、まだ密度の高い読書対象となる文学作品としての認知が確立されていませんでした。
当時の劇作家なかまのひとりで事実上英国最初の桂冠詩人となったベン・ジョンソン(Ben[jamin]
Jonson: 1572-1637)が、民衆劇場に書いた戯曲を含めて己の作品集をフォリオ本で出版したという先例(The Works of
Benjamin Jonson, 1616)があったとはいえ、
戯曲のみを集めた作品集が二つ折本として出版されたのは、このシェイクスピア・フォリオが最初で、実に画期的なことでした。
ファースト・フォリオにはシェイクスピアが単独か共同で書いたと現在考えられている39の戯曲のうち36本が収められています。このうち、『あらし』、『お気に召すまま』、『マクベス』などを含む18本はファースト・フォリオで初めて出版されました。『夏の夜の夢』、『リチャード三世』、『ハムレット』など残りの18本についてもそれまでに安価な単行本として出版されていたものとは、その本文に大なり小なりの異同があります。単なるリプリントはそのうちの2本にすぎない、と前述のブレイニー氏は述べています。
以上を要するに、シェイクスピア・ファースト・フォリオは出版史上、重要で画期的な出版物であるとともに、シェイクスピアの作品を今日に伝える上でも大変貴重な出版物である、といえるでしょう。
March 31, 2006
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